こんにちわ、でぃらです!
今回ご紹介する本はこちらです。
書籍紹介
【2021年本屋大賞・受賞作】
52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる―。
- 1最果ての街に雨
- 2夜空に溶ける声
- 3ドアの向こうの世界
- 4再会と懺悔(ざんげ)
- 5償えない過ち
- 6届かぬ声の行方
- 7最果てでの出会い
- 852ヘルツのクジラたち
著者紹介
【町田 そのこ】
(Wikipediaより)
福岡県生まれ・福岡県育ち。2016年、「カメルーンの青い魚」で新潮社が主催する第15回女による女のためのR-18文学賞の大賞を受賞する。
2021年、「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞した。
10歳のときに、母から薦められて氷室冴子の『クララ白書』を読んで、創作の世界に夢中になり、「絶対に作家になろう」と思ったという。学生時代は小説を書いたり、友人に頼まれて学生演劇の台本を書いたりしていた。2008年、氷室の訃報をきいて、虚無感を覚えて本格的に小説を書き、いくつかの文学賞に応募した、と語っている。好きな作家として、氷室冴子、高田郁、小川洋子、西加奈子を挙げている。好きなものとして、ビール、コーヒー、ビターチョコレートを挙げている。
登場人物一覧
ネタバレ防止のため、章ごとに分けています。
①三島 貴瑚(みしま きこ)
この物語の主人公。26歳女性。
アンさんからはあだ名で「キナコ」と呼ばれていた。
②村中 真帆(むらなか まほろ)
主人公の家の修繕をお願いされた業者の一人。
『三十前後。短く刈った黒髪や、日に焼けた筋肉質な腕が逞しい』
③ケンタ
村中の部下。
『ピンク頭に花ピアスという攻めたスタイルのわりに、真面目そうな態度だ。』
④アンさん
主人公がしきりに呼ぶ人の名前。この時点では詳細不明。
『でも、アンさんはもういない。』
⑤少年
『肩まで伸びた髪や、線の細い体つきで、中学生くらいの女の子だと推察する。』
⑥品城(しなぎ)
老人会の会長。
『白髪を綺麗に撫でつけ、ぴんと背筋を伸ばしたおじいさんだ。』
『シミとか皺の感じだと七十前後ではないだろうか。』
『「定年まで中学校の校長先生をやられていた、立派なおひとやけんな。』
⑦真樹(まさき)
主人公の弟。主人公の両親からは溺愛されている。
『真樹は欲しがりのくせに飽きっぽくて乱暴で、』
『ねえ、お母さん。わたしも、弟を抱っこしたい。』
⑧琴美(ことみ)
雨の中、主人公が出会った少年の母親。
会長の品城が父親で、現在同居している。
『「高校を中退したかと思ったらふっといなくなってさ。』
⑨主人公の母
『母は何のためらいもなく、通話を終えた。』
⑩主人公の義父
『「言うことをきけ」パン。頬が鳴り、わたしはその衝撃で目を覚ます。』
⑥52
琴美の子ども。自分の名前を聞かれると「ムシ」と書いた…
『「あんたがわたしに本当の名前を教えてくれるまで『52』って呼んでもいい?』
⑪牧岡 美晴(まきおか みはる)
主人公の友人。高校3年間同じクラスだった。
『美晴は短大を卒業した後に、学習塾に経理として就職したと言う。』
④岡田 安吾(おかだ あんご)
美晴の会社の先輩。
学習塾で講師として小学生に算数を教えている。
『人の好さそうな丸い顔に丸眼鏡、ニキビ痕の残る肌に芝生のような顎鬚。アンパンのヒーローが大人の男性になったら、こんな感じだろうか。短く刈った髪をつるりと撫でて、彼は笑った。』
⑫美音子(みねこ)
美晴の友人、主人公とルームシェアをしていた。
『「あのMP3プレーヤーは、美音子ちゃんがくれたの」』
⑬末長(すえなが)のおばあちゃん
52の父の祖母。52の世話をしてくれたが、既に亡くなっている。
⑭ちほ(千穂)
52の父の妹。末長のおばあちゃんと一緒に52をよく世話をしてくれた。
『『ちほちゃんに会いたい』 書いて、52はペンを置いた。』
『ちほちゃんが52にとってかけがえのない存在だったのだと分かる。』
⑮新名(にいな)
この時点では詳細不明。
『「ねえ、貴瑚。どうして新名さんを刺そうとしたの。」』
⑯武彦(たけひこ)
52の父。千穂の兄。働きもせず女遊びばかりしていた。
52が2歳の頃に、いよいよ帰ってこなくなった。
⑥愛(いとし)
写真に書かれた『愛』という字から、少年の名前がはじめて明らかになった。
『皮肉なもんよなあ。愛なんか語れるような両親じゃなかったけん」』
『「わたしは、52って呼ぶから」』
⑰匠(たくみ)
美晴の恋人。
『学習塾近くにある美容室の男の子と美晴が付き合い始めたのは、数ヵ月前のことだ。』
⑮新名 主税(にいな ちから)
主人公が務めていた会社の専務。
6章以降の登場人物の紹介は割愛します。
心ゆさぶられた名言・一文集【ネタバレ有】
※以下、ネタバレ注意です。読了していない方は読まないでください。※
※画像イメージです、全て無料素材を使用しています。
1 最果ての街に雨
「助けて、アンさん」
食いしばった歯の隙間から絞り出すように言うと、ぴたりと雨が止んだ。
・・・
見上げると、飛んでいったはずのわたしの傘を差した女の子がいた。
初めに読んだときは何とも感じない一文でしたが、改めて読み返すと「運命の出会い」だったんだなぁ…と感じます。
2 夜空に溶ける声
『お母さんとは、これでさよならだね。あのね』
わたしのこと、少しは好きだった?
そう問おうとして、でも最後まで言えなかった。
母は何のためらいもなく、通話を終えた。
無機質なビジトーンを聞きながら、わたしは彼女にとって何だったのだろうと思った。
この本を読み終えた今、母は本当に愛はなかったんだなぁ…とつくづく思います。
「ごめん。本当はあんたに少し傍にいて欲しい。
今、寂しくて死にそうだった」
言うと、新しい涙が出て頬を伝った。
細い腕を掴む手にもう一度力を込める。
「ちょっとでいいから、一緒にいて。お願い」
「このクジラの声はね、誰にも届かないんだよ」
本当はたくさんの仲間がいるのに、何も届かない。
何も届けられない。
それはどれだけ、孤独だろう。
「声をあげて泣いてもいいんだよ。
大丈夫、ここにはわたししかいない」
声が出せない少年。会話ができなくても、境遇の似た貴瑚と少年が通じ合った瞬間でした。
3 ドアの向こうの世界
「いい加減そのうるさい口を閉じろよ、おばさん」
アンさんが吐き捨てるように言い、わたしは目を見張る。
正義感の強いアンさんがとっさに言い放った一言。
貴瑚だけでなく、読者もアンさんに惚れた瞬間ではないでしょうか。
4 再会と懺悔
「な、んで……」
「探しにきたに決まってるでしょ、バカ」
目に涙を溜めた美晴は、わたしの頬を叩いた。
貴瑚がいなくなってどれほど心配したか、その思いが思いがけず行動となって表れています。
グッとくる瞬間でした。
5 償えない過ち
「わたし、やっぱり主税がいないとダメなの」
言いながら涙が出たのは、自分もまた妾の人生を歩もうとしていることに対する哀しみだったような気がする。
この貴瑚の一言で「あぁ、ダメだこりゃ…」と感じたのは私だけじゃないはず…。
6 届かぬ声の行方
「アンさんね……トランスジェンダーだった」
鈴が落ちるように、美晴が小さく声を洩らした。
この物語で一番衝撃的だった告白。思わずこの一文を何度も読み返してしまいました。
7 最果てでの出会い
「うそ、でしょ……」
飛沫をあげながら海に沈んでいく、大きな尾びれを見た。
一夜に起きた、信じられない「奇跡」。
「奇跡」ではなく、アンさんは常に見守ってくれていたんでしょうね…。
8 52ヘルツのクジラたち
まるで世界の果てにいるような、静謐な夜の景色を、ふたりで並んで眺める。
涙の滲んだ顔にもう一度笑顔を浮かべて、言った。
「キナコに会えて、よかった」
幻想的な景色の中、愛が貴瑚に言った一言。
この物語がハッピーエンドで括られる瞬間でした。
関連動画
クジラの鳴き声です。睡眠導入用BGMとしてリラックス効果があるようです。
貴瑚と少年もこのようにしてクジラの声を聴いていたのでしょうか…。
隣町本舗さんのミュージックビデオです、小説との関連はありません。
題材が52ヘルツのクジラと共通しているだけに、小説を読んだ後に聴くと鳥肌ものです。
これが映画のエンディング曲でもいいのでは…とも思えます。
関連書籍
町田そのこさんの小説をまとめました。どれも評価の高いものばかりです。
本作品が気に入った方はこちらの小説も読んでみてはいかがでしょうか。
おわりに
いかがだったでしょうか。
小説をより深く理解する一助に、購入する本を検討している方の参考になれば幸いです。
それでは、良い読書ライフを!
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